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ギターと私
 クラシックギター。この最も美しい楽器と触れ合って30年以上の時間が経ちました。子供のころ初めてこの楽器に触れたとき妙にしっくりきた感じを今でもはっきりと覚えています。その頃自分の人生とギターを深く結びつけたことはありませんでしたが高校を卒業し進路について決断を迫られた時、私の中でギターは大きな位置を占めるようになります。大学の付属高校を卒業した私はそのまま大学進学をすることもできましたが人生の中で二度とないこの若かりし時期の4年間を就職の為、学歴取得を目的で過ごすことは意味がないと感じ、進学はせずその時一番好きだったギターを本格的に学ぶことにしました。とはいってもギターを学ぶこと、音楽を学ぶこととはどういうことかわからず色々模索をしながらのスタートでした。4年目に日本で最も歴史と権威ある東京国際ギターコンクールに臨むことを決心し連日10時間以上の猛練習をはじめました。その時の私のレベルはこのコンクールの本選に選出されるような方とはかなり開きがあったのです。本番では無になることができ音楽を表現することのみに集中しすべてを出し切りましたが残念ながら結果は3位に終わりました。
 つね日頃、この楽器とは自然体で付き合って行きたいと思っていた私は職業音楽家としてプロになることは考えられず就職の道を選びこれまで仕事とギターを両立させてきました。30歳を過ぎた頃、国際的に著名なギター制作家である松村雅亘さんの紹介で二人のギターリストと知り合うことができました。お一人は大阪の北口功さん、もうお一人は世界屈指のギターリストであるイタリアのステファノ・グロンドーナさんです。それまでの私はギターの困難な演奏技術に多くの意識をとられており練習が苦痛に感じる事も多かったのですが、お二人からは深く音楽について取り組むことの大切さを教えていただき自分の中にあるギターの存在、意義、喜びを更に大きく膨らますことができたのです。
 芸術を深く追求することは芸術家の崇高な魂を追いかける終わりがない旅のようなものだと思います。先に進む為にはそれらの芸術家達の精神に負けないよう自身を成長させていくことが求められます。長く険しい道のりですが、一つ一つの山を乗り越えた時だけに感じることができる喜びの為にギターを弾いてゆきたいと思います。現在、地元で「クラシックギターとふれあう会」を主催する他、茨城県八郷町のギター文化館にてレギュラーギタリストを務めており可能な限り活動を広げて行きたいと思っております。